反社会的勢力との関係遮断は企業にとって重要な課題になります。多くの会社では総務・法務といった部署にて反社チェックをしているケースをよくお聞きします。

では、人事部の採用時においての反社チェックはいかがでしょうか。

最近は取引先だけではなく採用時においても反社チェックをする企業が増えてきました。

そこで、まだ採用時に反社チェックを実施できていない人事部の担当者様向けにチェックをするべき具体的な理由と方法について解説していきます。

 

採用時に反社チェックを実施すべき理由

政府指針

政府は2007年に「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を公表し、企業はコンプライアンス・社会的責任の観点より企業取引からの反社会的勢力の排除を進めております。

 

指針には基本原則として5つの原則が明記されました。

・組織としての対応

・外部専門機関との連携

・取引を含めた一切の関係遮断

・有事における民事と刑事の法的対応

・裏取引や資金提供の禁止

 

これらを受け、各都道府県では「暴力団排除条例」を制定することになります。

また条例制定後には各社は「反社会的勢力に対する基本姿勢の宣言」や契約書への「暴力団排除条項」を明記する対応が進められてきました。

 

もし知らない内に従業員として雇用してしまえば「一切の関係遮断」「資金提供の禁止」と少なからず政府指針に背くものになります。

参考:法務省 http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji_keiji42.html

 

暴力団排除条例

各都道府県では「暴力団排除条例(暴排条例)」を制定しています。

東京都の例を出せば暴排条例には反社との取引を未然に防ぐ為、事業者には以下の対応を求めています。

(事業者の契約時における措置)

第18条 事業者は、その行う事業に係る契約が暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる疑いがあると認める場合には、当該事業に係る契約の相手方、代理又は媒介をする者その他の関係者が暴力団関係者でないことを確認するよう努めるものとする。

 

2 事業者は、その行う事業に係る契約を書面により締結する場合には、次に掲げる内容の特約を契約書その他の書面に定めるよう努めるものとする。

一 当該事業に係る契約の相手方又は代理若しくは媒介をする者が暴力団関係者であることが判明した場合には、当該事業者は催告することなく当該事業に係る契約を解除することができること。

引用:警視庁 https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kurashi/anzen/tsuiho/haijo_seitei/haijo_jourei.files/jourei.pdf

要約すれば以下3つの点に対応をすべきとなります。

・契約時には暴力団関係者であるか確認をすること

・契約書には暴力団排除への特約を明記すること

・暴力団への資金提供の禁止

 

この”契約”には企業間の取引は当然含みますが、雇用”契約”にも該当すると考えられる為、採用時への対応も必要になります。

 

「反社会的勢力に対する基本方針(姿勢)」の宣言

現在多くの会社が「反社会的勢力に対する基本方針(姿勢)」を宣言しております。

企業によって多少の内容の違いはありますが政府指針である5つの基本原則をベースに宣言がなされています。

 

その中には、このような文面が含まれます。

・反社会的勢力と取引を含めた一切の関係遮断

・反社会的勢力への資金の一切の提供禁止

 

反社会的勢力との関係遮断が形式だけの宣言ではなく、従業員1人1人が意識付けを行う必要があると言えます。

 

取引先や銀行からの取引中止(暴排条項)

現在、取引時における契約書への「暴力団排除条項」を明記する企業が100%と言っても過言ではありません。

 

主な明記内容としては下記2つ。

・反社会的勢力ではないとお互いに確認し宣言すること

・反社会的勢力(関係者含む)であればいつでも契約解除ができること

 

この明記において各企業で”対象範囲”が違うことをご存知でしょうか。

結論から言えば”従業員”が入っているか否かになります。

 

■入っていないケース

自己及び自己の役員・株主(以下、関係者という)が、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はその構成員若しくはその構成員でなくなってから5年が経過しない者(以下総称して「反社会的勢力」という)でないこと。

 

甲及び乙は、それぞれ相手方(業務を執行する役員、取締役、執行役又はこれらに準ずる役員を含む。)が以下の各号に該当する者(以下「反社会的勢力等」という。)であることが・・・

 

■入っているケース

自己並びに自己の役員及び従業員が、現在、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなったときから5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロ又は特殊知能暴力集団等、その他これに準ずる者(以下これらを総称して「暴力団員等」という。)でないこと。

 

甲及び乙は、その役員(取締役、執行役、執行役員、監査役又はこれらに準ずる者をいう。)又は従業員において以下の各号に該当する者(以下「反社会的勢力等」という。)であることが・・・

 

当然ながら自社には入っていないから大丈夫。ということではなく”契約書に明記されている企業もある”ということを強く意識する必要があります。

少し厳しい言い方になりますが、人事部が他部署の足を引っ張らないように、しっかりと採用選考時には反社チェックを行うことをオススメ致します。

 

証券会社による上場廃止の可能性

IPOを検討中や既に上場されている企業の人事部の方向けになります。

日本証券業協会は「証券取引および証券市場からの反社会的勢力の排除について」を宣言しております。

 

その項目の以下2つに注目致します。

I-2必要性

暴力団等と企業が契約を締結することは、企業が犯罪行為等損害を受ける蓋然性が高いこと(暴力団の反社会性・犯罪性)、証券市場からの反社会的勢力排除は、暴力団の資金源に打撃を与えることができること(治安対策上の観点)、投資者保護や、健全で公正な証券市場の維持、コンプライアンスの確保のため(証券市場及び証券関係者の健全性維持)などの理由から、すべての証券関係者が一致団結して、証券取引・証券市場から一律に反社会的勢力を排除していくことが求められる。

 

2-(3) 上場会社に対する施策

③ 上場の適否の判断基準の明確化

上場会社が反社会的勢力と不適切な関係を有していることが明確となった場合、証券取引所は関係の解消を促すことになるが、関係の解消が見込めない場合には証券取引所がステークホルダーへの影響を配慮しつつ断固とした措置を講じることが求められているところであり、そのことを対外的に示すことにより、上場会社が反社会的勢力と不適切な関係を持つことを抑制する効果が期待できるものと考えられる。

したがって、証券取引所は、公益又は投資者保護に関する上場廃止基準の適用の中に、「上場会社が反社会的勢力と企業の健全性の観点から不適切な関係を有していることが訴訟結果その他の理由で明確となった場合において、当該関係の解消が見込めないと当取引所が判断した場合」が含まれることを明示するため、取引所ガイドブック等に掲載する等何らかの形で対外的に明示することを検討するべきである。

引用:日本証券業教会 https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/houkokusyo/h20/hoan_g.html

 

端的に言えば、関係解消に見込めない場合には上場廃止の可能性も示唆されていることになります。

 

仮に上場廃止になった場合の損害は計り知れないものがあります。

関係解消ではなく最初から関係を持たないよう会社として対応しましょう。

 

今回は、指針や法的観点より解説を致しました。

ですが当然、リスクという観点でも反社チェックの必要性はあります。

内部情報の流出や会社の乗っ取り、従業員の不祥事による企業の信用失墜なども事例としてあります。

 

そうなる前にしっかりとした対策を行いましょう。

採用時における反社チェックの対象について

結論から言えば採用時の反社チェックは全ての方を対象とするべきです。

 

・正規雇用

主に対象となるのが新卒・中途採用になるでしょう。

企業によっては「新卒は大丈夫」と判断されているケースもありますが、ニュース報道等で大学生男女グループの逮捕などは珍しくありません。

 

特に給付金詐欺に関しても多くの大学生の関与も発覚したことを目にされた方も多いと思います。また身元保証人、緊急連絡先に反社会的勢力が指定されている可能性も0ではありません。

 

学生だからと決めつけず対象範囲である認識が必要になります。

逆に最近では就職の企業紹介時に反社チェックをしている学校もあります。

 

・非正規雇用社員

パート・アルバイトに関しても同様にチェックが必要です。

非正規雇用であっても”雇用契約”には変わりがありません。その企業に属する以上、正規雇用社員と同様に企業にとって不利益となりえる経歴を持つ可能性もあります。

 

非正規雇用社員は正規雇用社員に比べ解雇の手続きは簡単かもしれませんが、解雇時にトラブル発展につながる可能性も考えられます。

雇用契約を結ぶ前に反社チェックを行い、そもそも関係を持たないことを前提に採用判断をすることが大切になります。

 

反社チェックのタイミングと方法

人事部による反社チェック実施企業が増えている中、まだ企業によっては人事部では導入をせず法務・総務部にて一括にて実施されている企業も多くあります。

当然これまで実施していない人事部にとっては新たな手間と時間・費用が発生していまい敬遠される理由になりますし、最後には法務・総務にて反社チェックするのだからと考えられる担当者もいます。

 

面接前

最初のスクリーニングとして採用選考より前の面接前の時点で反社チェックを行うことを推奨しております。

 

オンライン面談が加速した現在、対面しない面接を取り入れる企業も増えてきました。

画面越しでの判断となる為、判断がしにくい面も出てくるかと思います。

 

採用予定者のバックグランドチェックを目的に反社チェックに該当があるか否かを調査してみてください。

 

入社・雇用時

採用者には入社誓約書を提出してもらう対応が必要です。

 

” 私は、反社会的勢力との関係を有しておらず、かつ、将来においても関係をもたないことを誓約し、誓約内容に違反したときは、内定取消、解雇その他いかなる措置をうけても異議はありません”

 

という内容を盛り込んだ誓約書になります。

もし入社後に反社会的勢力と判明した場合や、その後関係を有していることが発覚した場合には誓約書を根拠に解雇をおこなうことができます。

 

誓約書がない場合には解雇が困難になることやトラブルに発展する可能性もある為、注意が必要です。

 

入社後に発覚した場合には、その後の対応に多くの労力がかかります。

未然に防ぐ為にも最初の入口である人事部でも対策を考えてはいかがでしょうか。

 

反社チェックの方法

主幹事証券からの指導では異なる2つ以上の手段での反社チェックが推奨されております。

その為、多くの会社では下記のいずれかで反社チェックをされているケースが多いです。

 

・Web検索(インターネット検索)

・新聞記事検索

・反社チェックデータベース

 

また反社チェックをする上で、どのように検索し、どのように判断したかというプロセス評価・エビテンス保存をおこないましょう。

手間・人件費・コスト・具体的な調査方法など吟味をしながら自社に適した方法にて実施をおこなってみてください。

 

採用・雇用後に反社会勢力と発覚した後の対応

採用前に反社チェック、入社誓約書を徴収、身元保証書などにて入念にチェックをしたのにも関わらずに見抜けず、入社後に発覚してしまった場合には迅速に解雇の手続きを取る必要があります。

 

経歴詐称や入社誓約書を元に手続きをおこなってください。

また反社会的勢力であった場合には自社のみで解決しようとせず、万が一に備えお近くの暴追センター、警察、お抱えの弁護士に相談するようにしてください。

 

稀な例ではありますが逆恨み、報復といった可能性も0ではございません。

反社会的勢力排除の基本方針にもあるように、外部機関と連携するようにしましょう。

 

従業員の不祥事は企業責任の時代

SNSが広まり従業員やアルバイトなどが原因で炎上してしまい企業にとって不利益と繋がる不祥事を目にすることも度々あります。

従業員やアルバイトの”身勝手な行動”であったとしても、ステイクホルダーからすれば管理・マネジメントが徹底できていなかった企業が悪いと考えるでしょう。

 

また近年、世間は反社会的勢力との関係に敏感になっており、反社との関わりは企業に致命的な損失を与えかねないリスクとなっております。

「反社会勢力と関わりがあること」は犯罪(違法行為)と同レベルでブランド・企業イメージを失墜させるものです。

 

犯罪(違法行為)は故意的なものでありますが、反社会勢力は「知らなかった」が充分にあり得えます。ですが当然「知らなかった」では済まされない問題です。

全ての人事担当者が「善管注意義務」を持って反社チェックの徹底がされる世の中になってほしいと願っております。

 

反社チェックシステム「minuku(ミヌク)」について

データベース型の反社チェックなら弊社サービスの「minuku(ミヌク)」にお任せください!

 

企業が実施している反社チェックの手法でWeb検索・新聞記事検索にて実施されているところが多いと思います。

企業担当者様からはよくある意見として下記のようなメリット・デメリットがあると頂戴します。

 

Web検索・新聞記事検索のメリット

・無料、もしくは比較的安い金額で実施できる

・反社会的勢力以外のネガティブ情報まで収集できる

 

Web検索・新聞記事検索のデメリット

・手間・時間がかかる/人員の確保が必要

・情報の精査や整理が面倒(無関係情報が多い)

 

弊社、反社チェックシステム「minuku(ミヌク)」であれば”社名または個人名”を入力し1クリックでPDF保存まで可能なので大幅な時間短縮・手間工数の削減に繋げることが可能です。

 

また、あまりご存知ない方も多いですがWeb上や過去の新聞記事であったとしても

ページ削除、記事削除がされるケースがあります。

 

Web上のプライバシー保護による観点で”忘れられる権利”、最近では弁護士による削除請求、誹謗中傷対策会社による逆SEOなどによって、不特定多数の方が観覧できる媒体では検索されて困る方の名前が消えている事実もございます。

 

そのような理由から弊社のようなデータベース型も活用する企業が増えてきております。

もしご興味がございましたらぜひお問い合わせを頂けましたら幸いです。